【2時間和風音楽】「天草島原日記-Edo‘s Christian 」-民と信仰のために天命を背負い旗を掲げた青年。江戸時代:島原の情景(浮世絵)
朝靄の残る川は、鏡のように静かだった。
天草四郎は、そのほとりに腰を下ろしていた。十字架の首飾りを靡かせ、水面には淡い空が映り、遠くでは鳥の声がする。背後からは、人々の気配がかすかに聞こえていた。武器を整える者、祈りを捧げる者。誰もが、今日という日がいつもと違うことを知っている。
まだ十六歳ほどの少年だった。
凶作と重い年貢、そしてキリシタンへの弾圧。苦しみに耐えてきた天草の人々は、ついに立ち上がった。四郎はその中心に掲げられ、多くの民の祈りを背負うこととなった。
四郎は川面に小石を落とした。
波紋が静かに広がっていく。
戦は、もう始まろうとしている。
恐ろしくないはずがなかった。自分には、まだ見たいものも、生きたい明日もあった。
それでも、振り返れば、自分を信じて集まった人々がいる。その一人ひとりにも、守りたい家族があり、帰りたい故郷がある。
四郎は目を閉じ、朝の風を受けた。
そして、静かに呟いた。
「民を救う天命に、我が全ての命を預けよう。」
川は何も答えない。
ただ、朝の光を受けながら、海へ向かって流れていく。
やがて一揆勢は富岡城を攻め、島原へ渡り、原城へ集結することになる。
そのすべてが始まる、ほんの少し前。
四郎は川辺に座ったまま、昇りゆく朝日を見つめていた。
世界はまだ、静かだった。
【Music List】
0:00 静怒 silent rage
25:44 天命 Destiny
43:10 思郷 homeland
1:14:18信念 Faith
1:37:45 揺蕩 sway
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