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統合失調症の方はどうしたら幸せになれるのか、精神科医が考えました。23分動画

精神科医 芳賀高浩46,078回視聴投稿日: 2026/09/15に公開済み
こんばんは。精神科医の芳賀高浩です。今日は「統合失調症の方が、何をしたいのか、どうやったら幸せになれるのか」を、いっしょに考えてみたいと思います。 統合失調症は、もちろん陽性症状と陰性症状の両方が問題になります。陽性症状というのは、幻聴や妄想、思考のまとまりにくさ、頭の中の混乱といった、いわば“派手に見える症状”です。一方で陰性症状は、やる気が出ない、感情が動きにくい、外に出たくない、人と関わるのがしんどい、閉じこもりがちになる――こういった“静かな苦しさ”です。治療で陽性症状が落ち着いたあとも、陰性症状がじわじわ残って、生活の質を奪っていく。ここが、本人にとっても、ご家族にとっても、本当に長い勝負になります。 外来でよくある会話があります。「調子どうですか?」「特に変わりません」。この「変わりません」は、悪くない意味で言っている方が多いんですね。大きく崩れていない。周りに迷惑をかけていない。波立たずに一か月を終えられた。だから“平穏無事”なんです。もちろん、まずはここを作ることが大切です。薬の調整をしたり、睡眠や生活リズムを整えたり、危険なほどの不安や被害妄想を減らしたり。まずは「大崩れしない」状態を作る。これは治療の土台です。 ただ、平穏無事が“ゴール”になってしまうと、人生の目標が「迷惑をかけないこと」だけになってしまいます。統合失調症の方って、私の印象では、心が優しい方が多い。相手に合わせるという意味の優しさではなくて、根っこが誠実で、周りを気にかける優しさです。だからこそ「また迷惑をかけたくない」が最優先になり、平穏無事が最大値になりやすい。 ここで一つ、イメージしてほしいことがあります。平穏無事を“ゼロ”だとします。具合が悪い時期はマイナス。妄想が活発になったり、頭の中が騒がしくて眠れなかったり、被害感が強くて苦しかったり。治療を丁寧にしていても、波はゼロにはならないことが多い。そうすると、ゼロとマイナスの間で波を作ることになりますよね。平均を取れば、どうしてもマイナス寄りになる。「普段はまあまあ、でも時々しんどい」。これが続くと、心も体も消耗していきます。 じゃあ、どうしたらいいか。私が外来で大事にしているのは、「その人の人生に、彩りを増やす」ことです。病気をゼロにできない慢性疾患であればなおさら、症状が残った範囲の中で、どうやったら“楽しい”“癒される”“夢中になれる”が増えるか。ここが治療の核心だと思っています。言い換えると、最大値を“平穏無事”のままにしない、ということです。好きなものができると、ゼロの上にプラスが生まれます。マイナスの時期があっても、プラスの時期も作れる。波の振れ幅は残っても、平均がゼロに近づいていく。これが、長期的には大きいんです。 もちろん、幸せの形は一つじゃありません。パートナーを見つける、家族を持つ、仕事で収入を得る、誰かの役に立つ、静かに一人の時間を大事にする。どれもいい。人それぞれです。私がここで言いたいのは、「あなたの幸せを、あなた抜きで決めないでほしい」ということなんですよね。病気があるから、もう諦める。若い頃に思い描いていた未来は全部捨てる。そうやって平穏無事だけを追い求める人生を、私はできれば歩んでほしくない。 ただし、医療者が「はい、これがあなたの趣味です」と渡せるものではありません。人がハマれるものって、本当に千差万別です。たとえば、吹き矢。忍者の道具みたいなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、ちゃんと競技会もあって、真剣に練習されている方がいるんです。ある患者さんは、たまたま動画で見て「面白そう」と思って参加してみたら、どハマりしました。吹き矢の話をするとき、その方の表情が変わるんです。目が輝いて、声に張りが出て、生活に芯が通る。こういう変化は、薬だけでは作れません。 別の方は、まさかの“ダンゴムシ”です。ダンゴムシを飼って、世話をして、生態を観察する。本人は「これが楽しくて、生きがいができた」と言いました。私自身は動物が得意な方ではないですし、正直、最初はピンと来ませんでした。でも、患者さんが教えてくれるんです。「ダンゴムシって、刺激がなくても丸くなるんですよ」「動かない時間があるんですよ」。そういう話を聞いているうちに、私の世界も少し広がっていく。治療って、こういう相互作用も大事なんですよね。 大切なのは、“探し方”です。無理やり必死で探せ、早く見つけろ、という話ではありません。私がお願いしているのは、アンテナを立てておくことです。「どうせ自分には何もない」と決めつけてアンテナを倒してしまうと、せっかく目の前を転がってきたチャンスのボールを、スルーしてしまう。だから、ボールがコロコロ転がってきたら、ちゃんと蹴ってください。シュートしてみてください。 外に出るのが怖ければ、まずは玄関の外に出るだけでもいい。次はコンビニまで。次は公園を一周。そうやって“小さな外出”を積み上げていく。人に会うのがしんどければ、最初は店員さんと「ありがとうございます」を交わすだけでもいい。お祭りやイベントに行くのも、混雑がつらければ、人が少ない時間帯に短時間だけ。刺激は必要だけれど、刺激が強すぎると逆に具合が悪くなる方もいますから、そこは慎重に。自分の容量に合わせて、少しずつでいいんです。 ここで誤解してほしくないのは、「趣味さえ見つければ全部うまくいく」という単純な話ではないことです。陰性症状は、気合でどうこうできるものではありません。集中力が続かない、疲れやすい、人混みが苦手、会話がしんどい。そういう“脳の体力”の問題が背景にあります。だからこそ、リハビリのように少しずつ負荷を上げていく。デイケアや作業所、訪問支援、ピアサポート、就労支援など、使える資源は使った方がいい。自分一人で背負わないことも、立派な治療です。 そして、趣味は“一生モノ”じゃなくていい。1回、2回で終わったっていい。2〜3か月で飽きたっていい。その期間、あなたの人生に彩りを足してくれたなら、それは立派に意味がある。人生って、私はある意味「暇つぶし」だと思っています。暇つぶしを、少しでも心地よいものにする。少しでも面白いものにする。慢性疾患と付き合いながら生きるなら、なおさらその工夫が効いてきます。失敗してもいいし、続かなくてもいい。続かなかったという事実だけで、あなたを責める理由にはならない。むしろ「やってみた」という事実が、次の一歩の材料になります。 もう一つ大事な視点があります。それは服薬の継続、いわゆるコンプライアンスにも影響するということです。最大値が平穏無事だけだと、「今まあまあだから、薬やめてもいいかな」が出やすい。退屈なんですよね。でも、夢中になれるものがある人は、「悪くなりたくない」が強くなります。趣味を続けたい。楽しみを守りたい。そのために薬を飲む、という動機が自然に生まれる。ここは臨床でも、かなり実感しています。「体薬」という言葉がありますが、私はこれを、“体が怠けた”という責め言葉ではなくて、「未来の楽しみが見えないと、薬は続きにくい」という現実として捉えています。 だから私は、まず平穏無事を目指します。これは当然です。でも、一旦落ち着いたら、そこで診察を終わらせたくない。「変わりありませんね、じゃあ薬出して次は4週間後」だけでは、もったいない。患者さんが幸せだな、楽しいな、癒されるなと思えるものを、粘り強く、粘り強く、いっしょに探していく。毎回言わないと、人はすぐ忘れます。陰性症状が強い方ほど、ぼんやり過ごしてしまう。だからこそ、外来のたびに「アンテナ立ててますか?」「何か引っかかったもの、ありませんか?」と聞くんです。肌感覚ですが、2〜3か月、長くても半年くらいの間に、「これ、ちょっとやってみようと思ってます」と言ってくれる方が多いです。 「精神科医がそこまで踏み込んでいいのか」という意見があるのも分かります。以前、パーソナリティの話をしたときに、「性格の問題に精神科が踏み込むのは領分を超えている」とコメントをいただいたこともあります。気持ちは分かる。でも、病気を完全に“治し切る”ことが難しい領域で、私たちが最後に目指すのは、結局「その人がどうやったら幸せに生きられるか」だと思うんです。症状だけを追いかけて、生活が空っぽになったら、本人が一番つらい。だから私は、雑談をします。どんなことに興味があった?この一週間、この一か月で、何か小さくても“いいこと”はなかった?気づきはなかった?ないないない、と10回言われたらさすがに引きますけど、私はしつこいので(笑)、もう少しだけ粘って聞きます。本人が思い出せなくても、支援者やご家族が「最近これを見て笑ってましたよ」と教えてくれることもあります。そういう断片を拾っていく作業なんです。 その先に、患者さんの「好き」が見つかると、治療はぐっと進みます。患者さんの顔が明るくなる。こちらも嬉しい。私も正直、外来が楽になる。患者さんの世界が広がって、私の世界も広がって、そして再発が減っていく。これが、私が考える「統合失調症の方が幸せに生きるための治療戦略」です。 ご家族や周囲の方にお願いしたいのは、結果より「試したこと」を一緒に喜ぶことです。外に出られた、少し片づけられた、動画を一本見た、店員さんに挨拶できた。こういう小さな前進は、本人の中では大仕事です。そこで「それだけ?」と言われると、次の一歩が遠のきます。逆に「よくやったね」と言われると、アンテナがもう一段立つ。彩りって、そうやって増えていきます。 そして、できない日があってもいい。波がある病気ですから、昨日できたことが今日はできない日もあります。その日は「休む日」と割り切って、また波が上がったときに次の一歩を踏めばいい。長い目で見て、少しずつで大丈夫です。 最後にお知らせです。私の著書『私の中の希死念慮ちゃん』も、概要欄に貼っておきます。死にたい気持ちを抱えた方、生きるのがつらくてたまらない方と、「どうやったら幸せに生きられるか」を一緒に模索してきた過程を、できるだけ正直に書きました。教科書の受け売りではなく、患者さんとの対話の中で積み上がったものです。参考文献も多くありません。だからこそ、私にとっては“魂の本”です。Amazonや楽天、書店、立ち読みでもかまいません。手に取っていただけたら嬉しいです。 私は毎日19時に動画を出しています。毎日って本当に大変です。でも、あなたの人生に小さな彩りや、学びや、気づきが一つでも増えたら、それだけで意味があると思っています。明日も19時にお会いしましょう。それでは、また。さよなら。

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