婚約破棄されたので退勤します。捨てた悪役令嬢が隣国王太子に拾われ、王国最大の人材流出になりました
王子に婚約破棄された日。
会場中が、私が泣き崩れるのを待っていた。
聖女は震えるふりをしていた。
王子は勝ち誇った顔をしていた。
でも私は、ただ息を吐いた。
やっと終わった。
もう、あの人を攻略しなくていい。
もう、愛されるために頑張らなくていい。
前世の私は、日本の会社で働きすぎて倒れた元社畜。
今世でも、乙女ゲームの悪役令嬢クラリスとして、
毎朝五時から王妃教育を受け、
王太子の政務を支え、
聖女の泣き芝居に対応し、
宮廷茶会という名の無給残業に耐えてきた。
そして卒業舞踏会の日。
王太子ヴェルナーは、私を悪女と呼び、婚約破棄を宣言する。
だから私は、丁寧に礼をした。
「承知いたしました」
「では、私は退勤します」
広間は凍った。
王太子も、聖女も、貴族たちも意味が分からない顔をしている。
でも私にとっては、これで王太子妃候補としての業務終了。
もう泣かない。
謝らない。
追いかけない。
そう思って会場を出ようとした瞬間、
扉の前に隣国カルデアの王太子ユリシオが立っていた。
彼は私に手を差し出して言う。
「貴国があなたを不要と言うのなら」
「我が国が、正式に迎えます」
王太子が怒鳴る。
「これは我が国の問題だ」
けれどユリシオは静かに返した。
「貴国が放棄した人材について話しています」
悪女ではなく、人材。
その一言で、私の胸は震えた。
三年前の干ばつ対策案。
二年前の国境交易改定案。
昨年の孤児院予算再編案。
全部、私が影で作った資料だった。
誰にも見てもらえなかったはずの仕事を、
隣国の王太子だけが見つけていた。
私はもう、誰かに選ばれるために働かない。
そう決めてカルデアへ向かった。
すると、捨てたはずの王国では、
茶会の派閥調整が崩れ、
孤児院の支援物資が止まり、
国境交易の更新期限が過ぎ、
王太子府の仕事が次々と破綻していく。
王国が捨てたのは、悪女ではなかった。
国を裏から支えていた、最大の人材だった。
これは、婚約破棄された元社畜の悪役令嬢が、
退勤宣言で王宮ブラック業務から逃げ出し、
隣国王太子に正しく評価されながら、
もう二度と自分を使い潰さない人生を選ぶ、
退勤ざまぁ×隣国溺愛×人材流出ファンタジー。
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