【油圧3系統がゼロ、推力だけで滑走路へ】舵が動かない…ユナイテッド航空232便 スーシティ【3D解説】
1989年7月19日、デンバーを出てシカゴ経由でフィラデルフィアへ向かっていたユナイテッド航空232便(マクダネル・ダグラス DC-10-10・乗客285名と乗員11名)は、巡航中の15時16分10秒、大きな破裂音とともに尾部の第2エンジンが壊れました。1段ファン・ディスクが割れて飛び散り、その破片とエンジンが壊れた力で、操縦翼面を動かす3系統の油圧がすべて失われました。DC-10 には人力の操縦へ切り替える仕組みがありません。
乗員と、客室にいた非番の DC-10 訓練審査操縦士は、左右の翼のエンジンの推力の差で向きを、推力の増減で約1分周期の縦揺れ(フゴイド)を抑えながら、右旋回を重ねてアイオワ州のスー・ゲートウェイ空港へ向かいました。フラップもスラットも使えないまま、閉鎖中の滑走路22へ進入し、16時00分に接地しました。機体は右へそれて裏返り、分かれて止まりました。111名が亡くなり、185名が助かりました。
米国家運輸安全委員会(NTSB)の報告書をもとに、3つに分けてあった油圧がなぜ一度に失われたのか、推力だけでどう曲がり高さを保ったのか、直径約32インチのファン・ディスクの欠陥と760回前の検査で見落とされた亀裂、そして事故のあとに変わったことまでを3Dで解説します。
■目次
0:00 はじめに 舵が一つも動かない
1:11 高度3万7000フィートの破裂音
2:47 3つに分けてあった油圧
4:23 尾翼に開いた79の穴
5:51 推力だけでどう曲がるのか
8:30 右へ回ってスーシティへ
9:46 閉鎖中の滑走路22
11:40 296人と空港の消防
13:02 直径32インチの円盤
14:23 欠陥はいつできたのか
15:53 760回前の検査で見逃された亀裂
17:47 推定原因と1人の反対意見
18:52 事故のあとに変わったこと
19:29 まとめ
19:59 おわりに
■この動画のポイント
・DC-10 の操縦翼面は、独立した3系統の油圧のうち2系統で動く。1〜2系統を失っても操縦できるように作られていたが、人力の操縦へ戻る仕組みは無い
・第2エンジンの破片が右水平安定板の第1・第3系統の配管を切り、エンジンが壊れた力で第2系統も壊れた(NTSB の結論)。水平安定板には破片による穴が79か所あった。3系統のタンクはすべて空だった
・故障の約1分後からは、フライトデータレコーダーに操縦翼面の動力による動きが記録されていない
・乗員は左右のエンジンの推力の差で曲がろうとしたが、機体は絶えず右へ曲がろうとした。推力の効きは最大20〜40秒遅れた。NTSB のシミュレーターの試験では、このような操縦は不確定な要素が多く、訓練できるものではないとされた
・NTSB は、乗員の働きは合理的な期待を大きく超えていたと考えている
・ディスクの疲労亀裂は、チタンを溶かす段階でできた「ハードアルファ」という硬くもろい欠陥から始まった。事故の760サイクル前の蛍光浸透探傷検査(FPI)のとき、亀裂は約0.5インチあり、見つけられたのに見落とされたと NTSB は結論づけた
・推定原因は、エンジンのオーバーホール施設の検査と品質管理の手順で人間の限界への考慮が不十分だったこと、そして破片の分布とエネルギーが DC-10 の油圧系統の防護設計を超えたこと。委員の1人は反対意見を書いた
・事故のあと、尾部で3系統が壊れても操縦を残せるよう、第3系統に遮断弁などを付ける改良が行われた
■出典
米国家運輸安全委員会(NTSB)「Aircraft Accident Report: United Airlines Flight 232, McDonnell Douglas DC-10-10, Sioux Gateway Airport, Sioux City, Iowa, July 19, 1989」NTSB/AAR-90/06(1990年11月1日)の内容をもとに独自に作成(報告書の文章・図・写真は使用していません・米国政府の著作物)
(米国連邦航空局のサイトに掲載されている同じ報告書の写し)https://www.faa.gov/sites/faa.gov/fil...
■3Dモデル・素材
・"Dc10" by manilov.ap(CC BY 4.0・塗装を外して白一色にし、故障後の形は改変して使用)https://sketchfab.com/3d-models/dc10-...
・"Boeing 737-800 Cockpit" by hakai315(CC BY 4.0・改変して使用)https://sketchfab.com/3d-models/boein...
・"Man Sitting" by apexpro(CC BY 4.0)https://sketchfab.com/3d-models/man-s...
・"Hydraulic Pump" by defiat11(CC BY 4.0)https://sketchfab.com/3d-models/hydra...
・"Aircraft Hangar" by jimbogies(CC BY 4.0)https://sketchfab.com/3d-models/aircr...
・"Airport Fire Truck 1" by Firechu_2011(CC BY 4.0)https://sketchfab.com/3d-models/airpo...
・"Maize Corn Plant" by gilles.schaeck(CC BY 4.0)https://sketchfab.com/3d-models/maize...
・"Metal Office Desk" by Poly Haven(CC0)
・テクスチャ: Poly Haven「Concrete Pavement」「Farm Soil」「Leafy Grass」(CC0)
・衛星画像(アイオワ北西部とスーシティ周辺): EOxCloudless https://cloudless.eox.at by EOX IT Services GmbH (Contains modified Copernicus Sentinel data 2016)(CC BY 4.0・加工して使用)
・空港と周りの空撮: Credit: U.S. Geological Survey(The National Map)/ U.S. Department of Agriculture, Farm Service Agency(NAIP)
・北米の地図: NASA Earth Observatory(Blue Marble)/湖: Made with Natural Earth
■注記
・3Dの映像は、報告書の記述・図・数値をもとに作り直した再現で、実際の映像ではありません。形や配置は簡略化しています。機体は塗装と記号を省いた白一色です
・操縦室は DC-10 の模型が無いため、ボーイング737の模型を3人乗りに見立てて代わりに使い、形を簡略化しています。人物は形だけの人形で表しています
・エンジンのファン・ディスクと油圧の配管は、報告書の寸法と図をもとにした模式です。ファンの羽根の枚数は報告書に無いため数えられない見せ方にしています
・飛行の経路と縦揺れの大きさは模式で、縦揺れは時間を縮めて表しています
・空港の空撮は現在の写真で、1988年に閉鎖された滑走路22/04は写っていないため、報告書の図をもとに描き足しています。衛星画像は2016年ごろの写真で、事故当時とは一部異なります
・報告書の「決定した」「結論づけた」「考えている」「推定される」「可能性がある」の区別と、証言は証言として、ナレーションでもそのまま使っています
・時刻は中部夏時間です
・この動画は責任を問うためのものではなく、報告書と同じく事故の仕組みを知るためのものです。個人の名前は出していません
■音声・BGM
音声: Gemini 3.8 Flash TTS(ja-jp-advisor-3)
BGM: 考察 / shimtone
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